2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

モンハン日記その3

 なんだか長々書いてきましたが、これで一応の終了ですよ。
 駆けだしハンターの頃のクックさんは本当に強敵でございましたな……。
 今でこそ、五分未満で討伐してしまうのですけれど、これが「モンスターハンター」か、というのを理解させてくれたよいモンスターです、ええ。
 何はともあれ、これで多少なりとも、モンハンがどういうものか伝わってくれればこれ幸い。
 さーて明日は何しよう?

モンハン日記 ―激闘! イャンクック ③―

 ――刃は、怪鳥の襟巻き状の耳を、見事に捉えた。鉄が肉に食い込み、それを引きちぎろうとする感覚が、刀身を通じて、女の両手に伝わってくる。
 心が奮い立つのを、一瞬で押さえこむ。大剣を握りこむ両手にもう一度力を込め、女はそのまま右に体を倒していった。
 体が倒れ込む勢いに合わせ、耳に食い込みかけていた刃が抜けていく。持ち主の動きに追従し、鉄の刃が縦から横へと回り、一回転した。
 すぐさま地面に腕を突いて体を起こし、立ち上がる。横手を見れば、イャンクックの大きな瞳と、自分の視線がかち合った。
「うわっ……!」
 慌てて、もう一回横へと飛ぶ。女が一瞬前まで居たその場所に、怪鳥の嘴が突き立った。何度も嘴に抉られて、地面が大きく形を変える。
「……っ!」
 その結果を目にしながら、女は今度こそ立ち上がった。大剣を背に回して担ぎながら、すぐさま走り始める。
「思ってたより早い……!」
 悪態を吐きながら、向かう先は巨鳥の背後だ。なるべく、相手の死角へ潜り込むようにしなければならない。
 とにかく、今は走り回るのが第一だ。巨鳥の攻撃を回避しつつ見極めるための時間が、今の女には必要だった。
「おっと……!!」
 怪鳥が、ぐるりと体を回す。細く長い尻尾が、目の前から一気に遠ざかった。
 気配、というよりは予測に従って、女は前へと飛び込む。その頭上すれすれを、遠心力のついた尻尾が行き過ぎていった。
 空ぶった一撃が、洞窟の壁を打つ。薄暗い洞窟全体が、軽く揺れたようだった。
 ぱらぱらと天井から落ちてくる埃を被りながらも、女はさらに走る。火炎液や嘴を避けながら、頭に浮かべるのは師匠の言葉だ。

 ――とにかく、深追いはするな。「いける」と思ったときは「厳しい」ときだ。

「自分と相手の早さを比べて、タイミングを計る……!」
 叫び、地面を蹴る。ちょうど目の前の怪鳥が、火炎液を吐き出したところだった。
 背後で響く炸裂音を聞きながら、大剣を振り上げる。鉄塊の一撃は、今度も外れることなく、イャンクックの顔面を痛烈に打ち据えた。
 さすがに顔を叩かれては堪えられなかったか、怪鳥の体が傾ぐ。
 その姿を見て、女は僅かに迷いを得た。
 追撃を掛けるか、それとも離脱するか――。
 体は、今が勝機だと叫んでいる。握り締める柄の硬さが、異様な程に強く伝わってきた。
 それとは逆に、頭の中には、先程の言葉が何度も繰り返し再生されている。
 自分の感覚と、師匠の忠言。その二つの間に生まれた迷いのために、女の動きが鈍る。
 そしてその迷いのために、彼女は手痛い教訓を刻みつけられることとなった。
「うわ――!?」
 朱色の巨体が、彼女に向かって倒れ込んでくる。
 次の一手を選択しきれずにいた女にとって、それを回避することは不可能だった。
 咄嗟に大剣を持ち上げ、横に構えようとするが、すでに遅い。
 自分のものを遥かに上回る、巨大な質量の突撃を、女はその全身で受け止めざるを得なかった。
「か、はっ……!」
 白銀の鎧を着込んでいるその全身が、軋みの音を上げる。骨という骨が痺れる感覚を覚えながら、女はそのまま宙を舞った。
 胃の中のものを無理やりに掻き回されるような、強烈な浮遊感は、すぐに終わりを告げる。
 顔から地面にぶつかり、そしてそのまま、土の上を滑っていった。顔が削り取られるような感覚をどうにか耐える。
 幸い、そこまでの距離を投げ出されたわけではないようだった。顔を上げれば、すぐそこに立ち上がろうともがいている巨鳥が見える。
 慌てて、女も起き上がった。胸が鈍い痛みを訴えるが、だからといってそこに留まっていいという理由にはならない。
「う、ぐ……!」
 胸を押さえながら、必死にその場を離れようとする。幸い、敵が追撃を仕掛けてくることはなかった。
「は、あ……はあっ……!」
 荒い息を落ちつけようと深呼吸しながら、振り返る。
 怪鳥はその爪で土を蹴りながら、喉を何度も鳴らして彼女を見つめていた。
 威嚇されている。そのことを、女は理解した。
「何かしら……さっきまでのは牽制だったとでも?」
 口元を拭えば、僅かに血の跡がついた。どうやら、唇の端を切っていたらしい。
 今になってじんわりとした痛みを感じるが、そんなことは今はどうでもいい。
 自分は、恐らく今、この怪鳥に挑発されている。言葉がわかるわけではないが、なぜかそう感じられた。
「いいわね、手荒い歓迎ありがとうイャンクック……!」
 自然と、笑みが浮かぶ。師匠や先輩達から聞いた話が、脳裏によみがえってきた。
 曰く――『この怪鳥は、いっぱしのハンターへの登竜門。こいつを一人で狩れないヤツに、ハンターへの道は開けやしない』。
「そうよ……私はなるの。師匠達みたいな、立派なハンターに!」
 最初の一歩目からつまづいてなんていられない。ここを乗り越えなければ、彼らに追いつき、追い越すだなんて夢のまた夢だ。
 頬を張り、気合を入れる。体を起こし、耳を広げる大怪鳥へと、女は声を張り上げた。
「目が覚めたわ……。必ず、あんたを制してやる! ここからが勝負よ、イャンクック!」
 背負った相棒に手を掛けながら、走り出す。応じるようにイャンクックが鳴き声を轟かせる。
 孤島での狩るものと狩られるもの攻防は、今、始まりを告げたばかりだ――。

《了》

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

みかわんこ

Author:みかわんこ
「となぎ」とか「みかなぎ」とか名乗りつつ
日々駄文を書き書きしている犬ですよー。
このページは20歳未満の閲覧を禁止しております。
過度の性表現に嫌悪感を抱く方も回れ右をオススメします。

ただいまお仕事募集中。
ご相談は下のアドレスへどうぞ。
アドレス:mikanagi_dog@yahoo.co.JP
(最後の二文字を小文字にしてください)

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR